血液クレンジングって効果ある?

SAMの会員さんに、「最近ネット上で、血液クレンジングって、話題になっているけど、実際効果あるんですか?」と聞かれました。SAM会員さんには医療相談、医学情報の提供(わかる範囲で)、アンチエイジングに関するアドバイスはするということにしてるので、答えようと思いましたが、私もよく知らなかったので調べてお答えするということにしました。どうせなら他の会員さんや会員以外の方にも情報提供したほうがいいかと。さらに論文の見方、科学的な思考についても少し解説します。

結論から言うと、ほとんど効果はないでしょう。特に健康人では。偽薬(プラシーボ)効果はあるので、完全に否定はできません。

では、血液クレンジングとは何でしょうか?

100ml〜250mlの静脈血を採血し、その中にオゾンガスを注入し、また体内に戻す。という治療らしいです。

オゾンは強力な活性酸素発生源であるため殺菌、抗ウイルス作用が認められます。ただ、殺菌作用がある量のオゾンを生体に投与すると、先に生体がやられてしまうので、試験管内だけの話になります。もちろん、採血した200mlの血液の殺菌にはなるかもしれませんが、4000〜5000mlの血液のうち200mlを殺菌したところで意味はないでしょう。

また、オゾンにより発生した活性酸素に対して、人間が本来もつ抗酸化システムが活性化することにより、効果を発揮する可能性は考えられます。

血液クレンジングがヒトに効果があるかどうかは、科学研究を行って検証しなくてはなりません。そこで文献を調べました。

帯状疱疹後神経痛には効く(?)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6118245/
帯状疱疹後神経痛という、帯状疱疹ウイルスに感染した後に長く痛みが残る疾患に対しては、痛みを減らす効果があったという報告です。

帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法を受ける92人の患者を「血液クレンジングする」群と「血液クレンジングをしない」群に分けて、治療効果に差があったかを比較して、「血液クレンジングをすると帯状疱疹後神経痛の治療効果が上がる」と結論を出しています。ところが、

対照郡の設定にミスがあり、「血液クレンジングをしていない」群では、血液クレンジングの採血をしていないため、自分が「血液クレンジングをしない」群に割り当てられたことがわかってしまいます。逆に「血液クレンジングをする」群でも自分の割り当てがわかります。そのため、治療効果が「本当にオゾンが効いている」のか、「オゾンが効いてると思い込む効果(いわゆるプラシーボ効果)」なのか区別がつきません。プラシーボ効果とは、例えば「薬だと思ってカプセルに入ったデンプンを飲んだだけで病気が良くなる」現象です。

特に痛みのような「主観」が入りやすいデーターはプラシーボの影響を受けやすいです。

このような研究を客観的に行うには、少なくとも両群とも採血をして、一方にはオゾンを吹きかけ、一方は何もせず、さらに患者に戻すまでの間、血液の色(オゾンを吹きかけると血液は赤くなる)を患者に見せてはいけません。つまり、患者自身がどちらの群に割り当てられているのか知らせてはいけません。さらに、治療効果を評価する人にも、その患者がどちらの群に割り当てられているのか隠さなければなりません。というわけで、この研究はあまり信頼性の高い研究ではないことがわかります。

論文=エビデンス、と思っている人は多いですが、残念ながら全ての研究が真実を語っているとは限りません。

他にもいくつか論文は出ていますが、あまり信頼性の高い論文はありませんでした。

もしかしたら血液クレンジング推進派の方は、「全ての論文を調べた結果効果がないと言ってるのか?もしかしたら、どこかにちゃんと科学的に正しい方法で効果があると証明した研究があるかも知れないじゃないか!」と主張するかも知れません。確かに、「効果がない」と断定するのは悪魔の証明になってしまうので大変難しいです。

基本的にはオゾンは「毒」であり、長期に吸入したりすると肺の障害などを起こすことが知られています。ただ、これはどの薬物でも同じで、大量なら「毒」で少量なら「薬」となる可能性があります。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19260079

ですから、オゾンに全く効果がないとは言い切れません。ただ、オゾンが「少量の活性酸素」を発生させて、それに対して自分の「抗酸化物質」を作り出すことによって効果を得ているとすれば、わざわざ高いお金払って、体に太い針刺してまでしなくても、運動したり、他にいくらでも安全で簡単な方法はあります。

今回ネットで叩かれたのは、「医療にステルスマーケティングを持ち込んでいいのか?」ということでしょう。お金もらって治療を受けたインフルエンサーが「効く!」と宣伝して、それを信じた人たちがわんさか病院に押し寄せたという。コマーシャルでシャンプーの宣伝見て買ってしまった、とは次元が違う問題です。以前からこのような問題はたくさんあり、経験談に騙される人は一定数いたわけですが、それほど数は多くありませんでした。もちろん数が少ないから問題がないというわけではありませんが。ところがSNSの発達により、引っかかる人が大量生産されるようになってきました。

我が身とお財布を守るためには、インフルエンサーを安易に信じないこと。また、「儲かりさえすれば何でもやる」医者、企業がいるということに気づくことが大事です。血液クレンジングをやってる医療機関のホームページをいくつか見てみましたが、レベルの低い記述もありました。例えば、「オゾンを投与すると血液は赤くなって、増えた酸素が全身に行き渡る」とか。もちろんこれは間違いではないです。嘘は言ってない。でも、血液は体の中で肺を一回通ればちゃんと赤くなりますから。知識がない人は「スゴイ!」って思っちゃうんだろうなあ。

確かに赤くなります。

血液クレンジングをやってるクリニックのホームページの特徴は、たくさんの効用を並べていることです。そうすると、どれか一つでも当たれば(たまたま頭痛が良くなったとか)、「効いた〜」と思い込んじゃいます。

ちなみに、血液クレンジングで「効く」と思ってしまうのには理由があるかもしれません。それはオゾンの効果ではなく添加する「マグネシウム」が血管拡張を起こし、「温まる」気がするためと言われてます。(未確認情報です)もちろんマグネシウムや、それ以外の物質の添加など行なっていない施設もあるかも知れませんが。

結論

血液クレンジングやら水素吸入やらをやってる病院に行こうか迷った時は、そこでそのような治療をやってる理由を考えましょう。

おまけ。血液クレンジングやってる医療機関さんへ。信用と引き換えに得られた泡銭の代償は大きいかも知れませんよ〜。余計なお節介でした。

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